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2021.01.15

アピチャッポン・ウィーラセタクン × 坂本夏海

アキバタマビ21 特別インタビュー EWS教授に「世界」を聞く
アピチャッポン・ウィーラセタクン × 坂本夏海
自分に正直であること

インタビュー映像は1月15日(金)〜2月14日(日)まで、アキバタマビ21にて上映しています。
http://www.akibatamabi21.com/exhibition/201203.htm

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*Please scroll down for the English version.


坂本:このような機会をいただき、本当にありがとうございます。今日はアピチャッポンさんとお話できることを光栄に思います。

アピチャッポン:私もです。

坂本:ちょっと緊張していますが、今回はアピチャッポンさんのお仕事について、若手作家へのアドバイスも含めてお話が聞ける素晴らしい機会だと思います。

簡単な自己紹介をさせてください。私は日本で生まれ育ち、現在スコットランドに住んでいます。多摩美術大学の油画専攻を2009年に卒業しました。在学中、映像の制作方法をそれほど学んだ訳ではありませんが、自分のパフォーマンスを録画したりしていました。それが私の映像制作との出会いでした。今でも映像制作は初心者のような気がします。現在はソニーのデジタル一眼レフを使って自分で撮影、編集して低予算の映像をつくっています。

アピチャッポン:アーティストとしてグラスゴーに滞在しているのですか、それとも勉強されているのですか?

坂本:日本のポーラ美術振興財団からの支援を受けて、アーティストとして活動しています。今回のようにアーティストとして全面的に助成を受けるのはほぼ初めてです。 私のパートナーがグラスゴー出身ということもあり、家庭の事情で昨年こちらに引っ越してきました。ちなみにロンドンの大学に通っていた時、映像を少し学びました。

アピチャッポン:経歴を説明してくれてありがとうございます。

坂本:今日はたくさん質問を用意しています。

アピチャッポン:それでは早速本題に入りましょう。


●スタジオと制作環境●

坂本:質問は長すぎたので、少しシンプルにしたいと思います。私はアピチャッポンさんの作品を映画も含めて東京などで観てきて、学生の頃からすごく影響を受けています。今日のためにいくつか観直して新しく疑問に思ったこともたくさんあります。でも私の世代には映像制作に興味がある人がたくさんいるので、今回のインタビューは映像制作を勉強しようとしている学生と私のような若手作家の参考になりそうな質問を考えてきました。

まずはアピチャッポンさんのキャリアについて質問させてください。確かタイのコーンケンにスタジオをお持ちだったと思いますが。

アピチャッポン:私はいわゆる一般的な意味でのスタジオは持っていません。いつも家で制作をしているんですが、現在はバンコクで映画を仕上げているところです。チェンマイに移り住む前はバンコクで15年以上制作活動をしていました。私の仕事場はスタジオというよりも考え事をしたりミーティングをするための机があって、たくさんの木々に囲まれた家です。

坂本:いいですね。「キック・ザ・マシン・フィルムズ」という名前だと思いますが、本当にオフィスやスタジオのようなスペースもないのでしょうか?

アピチャッポン:そうです。あるのはキッチン、ダイニングスペース、本がたくさんある試写室や作品の収納スペースです。でも実際私はどこでも制作することができるんです。

坂本:想像していたのとは違いますね。大きなスタジオで制作されているのを想像していました。

アピチャッポン:いえいえ、私は典型的なスタジオアーティストではありません。特定のプロジェクト以外はアシスタントもつけません。

坂本:アピチャッポンさんが地元の人や役者さんと作品をつくり上げていく過程をお聞きしたいです。映画によく登場している方を見るとまるでアピチャッポンさんの家族にお会いしているような気分になります。プロジェクトベースの作品が多いかと思いますが、同じ役者さんやご友人と一緒に制作されているのでしょうか。

アピチャッポン:私はいろんな都市や場所に行って、モバイルライフを楽しんでいます。複雑なプロジェクトの時は、チームメンバーと一緒に行動してスペースを借りて制作したりしますが、ホテルに泊まることも多いです。しかし作品のコンセプトを考えている期間のほとんどは一人で行動しています。他人の責任を取らなくて良いので、 車を運転したり、写真を撮ったり、文章を書いたりしてこの時間を楽しんでいます。自分と対話して風景や人とシンクロするように集中しなければなりません。

また、私は人見知りなので自らの手で撮影したいのです。編集は自分でやりますが、映画制作には他の人の助けが必要です。なので、一緒に制作をしていて苦にならない面白い撮影クルーや役者を長年探してきました。あなたが言ったように彼らは家族のような存在なので、私は緊張することもないし不快になることもありません。アーティストと共に制作する際は、自分自身も含め、一緒にいて苦にならない人としか仕事ができません。一人でいることが好きになる必要があるのです。

坂本:ロケ地はタイが多いですよね。アピチャッポンさんの映画を見ていると私も旅をして新しい人に出会うような感覚になります。また、もし私が同じことを同じ国でやろうとしたらどうなるのかにも興味があります。私は日本出身ですが今は外国に住んでいて、新しい物事を発見する機会に恵まれています。外国人ということを生かして、スコットランドの迷信を題材にした映像をつくり、日本との繋がりを模索したいとも思っています。アピチャッポンさんは現在も母国タイで活動しながら新しいストーリーや人々を発見されていますが自分と母国との関係性についてはどのようにお考えでしょうか。

アピチャッポン:いろんな人と繋がることで、いろんな背景を理解することができるようになり、この国をいろんな角度から見ることができるようになりました。タイでは、人々の階級が何層にも分かれていて、偏見や不平等も存在します。人や場所と繋がるためには、色眼鏡をかけず、様々な人の背景を正確に感じ取る必要があります。役者やスタッフに魅力を感じれば、彼らの人生に興味を持ち、一緒に旅をしてもっと多くのものを共有したいと思うはずです。旅先では仕事のことはあまり考えません。 自分の周りの人や環境を理解するのは楽しいですし、作品のアイデアやコンセプトは後から湧いてくるものです。

坂本:非常に興味深いですね。アピチャッポンさんの作品の中には、先日私が観直した『真昼の不思議な物体』のように新しい人と出会って話をしてもらうシーンがあります。その中には、自分とは全く違うバックグラウンドを持った若い人たちもいます。新しい人と出会い、新しい物語が始まる。楽しいですよね。


●キャリア初期について●

坂本:インディペンデント映画作家としてのキャリア展開についてお聞きしたいです。 アピチャッポンさんは作品の構成を独自に練り、プロジェクトごとに様々な人と制作していらっしゃるとお聞きしました。低予算で自給自足の作品から、大勢のクルーを必要とする一大プロジェクトまで、どのような道のりだったのでしょうか。

アピチャッポン:私の映画は商業的なものに比べて低予算なのですが、商業映画は自分に合っていないと思います。私は本当に人見知りなので周りにたくさんの人がいるのは好きではないんです。25年前、制作を続けるためにシカゴからタイに戻って来た時、インディペンデント映画やアートとしての映像作品などはありませんでした。16mmフィルムの設備もなかったので35mmフォーマットを使って業界に入る道を探しました。これは特にやりたいことではなかったのですが、組織の内側で制作をしてみようと思ったのです。徐々にチームメンバーも増え、自分自身のスタイルも確立しましたが、未だにタイでどうやったらうまくいくのか共同制作を通して模索中です。

坂本:アメリカから帰ってきて、タイの映画界の新しい歴史を作ったような感じですね。アピチャッポンさんは自分がタイの若い世代のアーティストに影響を与えていると思いますか? また、今活動されている地域には、映画制作コレクティブやアーティスト・コレクティブはありますか?

アピチャッポン:コレクティブではないですが個人はいます。私たちは個人のプロジェクトをサポートしてくれる素晴らしいプロデューサーを見つけることができました。私もこのインディペンデント映画の流れに少し影響を与えたかもしれませんが、一番影響したのは機材の普及です。デジタルフォーマットが比較的安価で手に入るようになって民主化されました。また、タイの社会的・政治的な状況により人々が声を上げざるを得なかったのも一因といえます。タイの映画館で上映されているのはいくつかのジャンルに限られているので、デジタル経済とソーシャルメディアのプラットフォームと共存することによって、若者たちはこの激動の時代から刺激を受けていると思います。

坂本:非常に興味深いです。ロンドンに留学していた私の友人がいて、その友人に映画をつくったタイの方がいるんです。彼女が言うには、タイには意欲的な映画作家がたくさんいて、若い人たちはアピチャッポンさんの作品に影響を受けているそうです。

機材の話も興味深いので機材と資金集めについてもっとお聞きしたいです。映画撮影に適切なカメラをレンタルする場所はありますか? また今まで企業と組んで撮影機材を調達したことはありますか?

アピチャッポン:案件によっては自分の機材を使うだけでなく、レンタルもしています。私たちのチームには照明やカメラクルーなど優秀な人材がそろっています。タイには香港やベトナムの映画制作者のための高品質のポストプロダクション・ハウスがあります。私たちのようなこの地のインディペンデント映画作家は自分たちの機材を使用することもあり、個人的には多種多様なカメラを使っています。予算が少ない時には小さいカメラを使います。4Kでも8Kでもあまり関係ありません。低解像度のカメラのフォーマットは面白いので、今でもそれらを使うことがあります。私はお金のあるなしに関わらず、すぐに自分でやってしまうタイプですね。

坂本:今あるものを使って、できるものを作っていくんですね。

アピチャッポン:はい。私はただ外に出て撮影するだけです。

坂本:いいですね。


●キャリア継続のために●

坂本:アピチャッポンさんはずっと作品をつくってこられた訳ですが、恐らく制作を続けることが難しい時期もあったのではないでしょうか。私は今年で34歳ですが、たとえ才能があっても、制作を続けられるとは限らないと感じています。このキャリアを続けていくのは本当に難しいです。私も難しいと感じたことがあります。この様な葛藤に対するアドバイスやご自身の経験に基づいたお話を聞かせていただければと思います。

アピチャッポン:人生は人それぞれですが、まずアートに興味を持っていたのならいつでも創作することはできるはずです。アートに対するその人の気持ちが表れるといっても過言ではなく、本当に制作を心地良く思っていれば、つくることへの恐怖心に打ち克ち、成功へ導かれるでしょうから。

しかし成功とは何でしょうか? お金を稼ぐことでしょうか? 承認されることでしょうか? もしそう考えるなら、自分とその才能である本来の創作意欲との関係を再確認する必要があると思います。アートは富や名声のためにあるものではありません。文章を書いたり呼吸をするように習慣化しなければなりません。撮影するお金がなければ1日1時間でもいいから、夢やビジョンについて書いてみてはどうでしょうか。アートをつくらない言い訳はありません。どんな状況であっても、つくらなければならないのです。アートをつくらないということは、その人の心がアートに向いていないということです。

自分を批判するのはやめましょう。自分のことを批判しすぎてしまう時もありますから。また周りの人、親、旦那さん、奥さんなどから批判されることがあるかもしれませんが、気にしてはいけません。自分自身を尊重するべきです。もし制作することが楽しいなら、それでいいんです。楽しくなければやらなくていい。それくらい単純なことです。時間を決めて、毎日文章を書く。書くことは本当に大切なことだと思います。自分と対話することができますからね。例えば、自分への手紙を書くとか。アーティストとしての自分をどう見ているのか。でも、あまり考えすぎないようにしましょう。1週間に1つの作品を作る。チャレンジを設定して、楽しんでやってみてください。

坂本:貴重なお話ありがとうございます。人は自分に対して批判的になりすぎていることが多いと思うんです。努力家の人は特に。

アピチャッポン:特に今は、何でもアートに成り得ます。例えば週に1つの作品をつくるとしましょう。公共の場所に行って呼吸したり、1時間座ったりするだけでも「私のパフォーマンス・アートだ」と言えるのです。予算は要らず、必要なのは時間だけ。そこで経験したこと、行ったことの反響を書き留めておけば、また翌週の作品を考えることができて、書いたり、写真を撮ったりすることができます。

坂本:やれることをやるというのは、非常に大事なことですね。

アピチャッポン:そういう習慣を作ることですね。

坂本:先日アピチャッポンさんのインタビューを読んだのですが、夢日記をつけているそうですね。

アピチャッポン:はい、でも毎日ではありません。たまに夢を覚えていないことがあるので、他のことを書き留めています。

坂本:無意識や夢などからインスピレーションを得るんですか?

アピチャッポン:そうですね、でもそれらを覚えておくためでもあります。書き留めておかないと忘れてしまうこともあるので。書き留めたり、誰かに話しかけたりすることはとても大切なことです。たとえそれが犬や猫であっても。


●制作活動について:ストーリーメイキングにおける現実とフィクションの関係●

坂本:制作活動についての質問もあります。偶然出会ったストーリーを使うことやご自身で書いたものも含め、アピチャッポンさんのストーリーメイキングには非常に興味があります。特に現実とフィクションの違いはとても興味深いですね。昨日『真昼の不思議な物体』を観ましたが、そこでもやはりフィクションと現実が混ざり合っていて、何が現実で、何がそうでないかを見分けるのは非常に難しいです。以前「ドキュメンタリーは最終的にはフィクションである」とおっしゃっていたことが記憶に残っています。この手のストーリーメイキングはどういったものなのでしょうか?

アピチャッポン:視点をどこに置くかが重要だと思います。何が現実かそうでないかはその人やその人の視点次第です。映画は真実を伝えてはくれませんし、全てが主観的な視点によって左右されるので人生すらも真実を伝えてはくれません。例えば手にしているこのコップにしても、私たちはこのコップについて異なる考えを持っているでしょう。坂本さんの考えも、現実も、記憶も、私のそれとは違うのです。アートや映画をつくるとき、作品をある種のフレームに入れますよね。映画ではありがちなのですが、作品を編集したり、光を加えたりして現実に似せようとすると、自分自身のリズムを入れ込んでしまい、決して現実にはなりません。編集したり、カメラを被写体に近づけたりすると、見えないものが見えてきます。現実をつくることは不可能なのです。夢は現実ではないと言う人もいますが、私は自分の夢の中の世界が見えます。 私の夢は現実に起こっていることなのです。映画というのは真実を表している訳ではありませんが、自分自身の現実と言えるでしょう。

坂本:同感です。

アピチャッポン:現実もフィクションも存在しないので、その話をするのは意味がない時もあります。

坂本:アピチャッポンさんの映画を見るたびに、フィクションがより現実に近いものになっていることに気がつきました。色々なフィクションの映画を観ますが、それらのフィクションは現実と距離があるように感じます。しかしアピチャッポンさんの映画を観ていると、フィクションであっても、アピチャッポンさんが経験したことがあるかもしれない現実や夢に似ているような気がして、現実を見ているようです。それはどこか見ている人の不安を煽るフィクションのようです。

アピチャッポンさんの作品からは、自分もその場所にいるような感じを覚えることが多いんです。私はタイに行ったことがありませんが、いつもその場所にいるような感じです。その体験や夢はとてもリアルで、他の映画の架空の物語を観る時の感覚とは全く違います。自分の現実感に影響を与えない物語の方が安心して観ていられます。現実とフィクションの関係は非常に曖昧な境界線で仕切られていると思います。

アピチャッポン:私は自分なりの存在定義をしようとしています。自分に正直になって、現実を描こうとすると、子どもの頃や夢の中に実在した幽霊や化け物によって自分の世界が侵害されてしまうことがあります。このように様々な現実が織り交ぜられて、個人的な何かを作り出しているのだと思います。現実の中で私たちがこうやって話をしていても、後になってこの映像を見た鈴木さんが編集すると、それが彼の現実になるんです。それはもう現実ではなくて、鈴木さんの視点になりますね。

坂本:役者さんの身の上話など、アピチャッポンさんは作品に実話も取り入れているのが面白いですよね。あと、よく一緒に仕事をされているジェンさんという女優さん。ある映画では、彼女の身の上話からインスピレーションを得たストーリーを使って、その映画のストーリーにも影響を与えていますね。あの映画では彼女の実の旦那さんが出ているんですか?

アピチャッポン:彼女の実生活の背景を使っています。でも映画では、彼女の夫役は役者さんに演じてもらいました。

坂本:なるほど。ストーリーは同じでも役者を使ったのですね。アピチャッポンさんの話と、他の人の話が有機的に融合していますね。


●制作活動について:様々なメディアを使うこと●

坂本:私にとってアピチャッポンさんの作品との最初の出会いは映画ではなく、展覧会でした。アピチャッポンさんの作品には長編映画から映像インスタレーションまで、いろいろなスタイルがありますよね。それらの作品をよく「プロジェクト」と呼んでらっしゃいますが、その中には映画や本、インスタレーションなどいろんなものが含まれていると思います。どうやってそのような作品を制作しているのですか? 最初に考えたことが別のメディアに広がっていくのか、それとも別々のフォーマットを行ったり来たりしているのでしょうか?

アピチャッポン:プロジェクトによっては、「これは長編だ、これは短編だ、これは写真だ」と決めることもあります。しかし、場所やアイデアには面白い面がたくさんありそれら自体がプロジェクトになることもあります。このプロセスはいたって自然に起こります。絵を描きたい、写真を撮りたいと思ったら、何が起こるかわからないので取りあえずやってみますね。

坂本:アイデア次第なんですね。面白いストーリーがたくさん出てきて、その全てを映画に収めることができない場合は、別の作品やプロジェクトをつくるんですね。

アピチャッポン:何かを撮りたいと思ったら撮ります。写真を撮って、その写真の方が面白いと思ったらその写真が作品になります。


●タイの現状とその影響●

坂本:少し時間があるので、タイの現状についてお聞きしたいです。以前、インタビューの中で、ご自身は政治的なアーティストではないということをよく話されていましたね。作品には政治的な問題が巧妙に描かれていますが、それは主題ではないと。日常の会話の中では、現実では避けられないような政治的な問題が現れることがありますが、それはアピチャッポンさんの制作のアプローチと重なるような気がします。

しかしここ最近の、特に今年のタイに関するニュースを読んでいると、これまでとは大きく違うように思います。民主化デモが続いていますね。バンコク・ビエンナーレでアーティストがこの状況について声明を出しているのも最近見ました。このような状況は、ご自身の制作アプローチにどのような影響を与えていますか?

アピチャッポン:とても良い質問ですね。私は人生の流れに身を任せているので自分でもそのことについて疑問を持っています。若い頃は、個人としての政治や性における政治など、違った種類の政治に興味を持っていました。しかし、年を取るにつれて、国の状況、世界の状況をもっと知りたいと思うようになりました。社会保障とか、そういうことを考えるようになったのです。

現在の決起は、高校生くらいの若い世代が始めたものです。本当に刺激的ですよね。彼らは、上の世代が法を恐れ触れてこなかったテーマについて話すようになりました。例えば、君主制、王室といったことです。若い世代はそれらについて議論することができます。全国で何百万人もの人たちが立ち上がろうとしているので、私はこの世代を理解しようとしています。触発されて、デモにも参加しました。ビデオも撮りましたが、その映像をどうするかはまだわかりません。デモを記録することで、今の状況を理解している最中です。若い人たちの異なるアイデンティティと精神性の変容を比較せずにはいられないのです。もしかしたらこれが新しい作品になるかもしれませんが、まだわかりません。

坂本:まさに今起きていることですので、客観的に見るのは難しいと思いますが、映画制作の観点から現状を注視しているということですよね。ご自身も参加してきて、そのようなことからある意味で距離を置いていた今までの作品とはアプローチの仕方が絶対的に違うのかもしれませんね。おそらく現在は熟考されていて、その後何らかの作品が出来上がるのでは、と想像します。

アピチャッポン:なるべく決めつけないようにしています。アイデアが降りてくるのを来るのを待つだけです。何かを書き始めたり、撮り始めたりすると、しばらくしてその作品の夢を見ることがよくあります。寝ている間に夢に出てくるんです。

坂本:とても面白いですね。無意識に自分が何をすべきかの答えが分かっていらっしゃるんですね。

アピチャッポン:そうですね、時々。


●文化的背景の異なる地域での発表●

坂本:最後の質問のうちの一つです。ヨーロッパ人や日本人がアピチャッポンさんの作品をどのような視点から見ているのかについて興味があります。アピチャッポンさんの作品の情報は、日本語か英語のどちらかに翻訳してもらわないと私にはわかりません。 私やヨーロッパの人たちのように、全く異なるバックグラウンドを持った人たちがどのようにアピチャッポンさんの作品を解釈しているのかということにとても興味があります。

タイの地方政治にしてみても、十人十色の視点があることが分かりました。 アピチャッポンさんの作品について、ヨーロッパや日本の視点から書かれた映画評や考察を色々読みましたが、それらはローカルな文脈をあまり考慮していないと感じることもありました。前作の評論では、美学やテクニック、あるいは哲学についての話が多く、日常的なローカルな問題や政治は切り離されています。

また、海外と地元の観客の違いについても興味があります。アピチャッポンさんの作品の受け止め方にそれぞれ違いがあるのでしょうか? そこに普遍性があるのかどうかも気になりました。各々の背景が各々の視点を形作っていると思います。私はヨーロッパで仕事をしている日本人ですが、私の作品は日本の女性アーティストが作ったものとして解釈されます。しかし日本で作品を発表すると、また別の解釈をされ、自分の観客が誰なのか戸惑うこともあります。友人ともよくそんな会話をするんですが、友人の一人は、どこで展示するかによって作品を変えることが多いと言っていました。

アピチャッポン:いや、それは面白いかもしれませんが、私はそのように自分の作品を変えることはしません。私は自分の観客が誰なのかなんて気にしていません。自分の作品の最初の観客は私自身なのですから。私は自分が共有したいことに対して、正直であるかどうかだけを気にしています。なぜならそれ自体がすでに十分難しいからです。自分自身と対話して、自分が何を求めているのかを理解することが一番難しいと思います。

キュレーターとの仕事は重要で、 例えば、日本で作品を発表した時には、その展示スペースのことを知っているキュレーターとの仕事が一番良かったです。彼らは展示空間の状況やアドバイスをくれました。私はキュレーションが仕事ではないし、観客のことを考えるのも仕事ではありません。キュレーションをしなければならないのなら、自分のためにキュレーションをします。アドバイスができるとしたら、他の人がどう思うかを気にすることに時間をかけない方がいいということです。自分の作品の事をもっと考えてみてください。 最近、断捨離達人の近藤麻理恵さんの記事を読んでいて面白いと思ったんです。

坂本:私もたまにNetflixなんかで彼女の番組を見ます。

アピチャッポン:彼女が外国人向けの番組をつくる時は、とてもミニマルでさっぱりしたものをつくるということでした。でも国内向けのものは違うスタイルでつくるらしいですね。豊富な色や文字のフォントを取り入れて。彼女のことを引き合いに出すならば、彼女の作品はアートではなく、商業そのものです。

坂本:本当ですね。

アピチャッポン:近藤麻理恵さんにはならないほうがいいと思います。彼女のやっていることは実用的で美しいですね。でも、ビジュアルアートの文脈では、自分は自分である必要があります。アーティストとして、様々な人のために様々なものをつくることは健全ではないと思います。なぜなら、広告会社のようになってしまうからです。

坂本:「自分の気持ちを信じること」というのは私が確かに苦戦していることでもあります。制作をすればするほど、他人がどうやって制作しているのかを見てしまう。20代の頃のように自分を信じるのは難しいです。先ほど仰ったとおり、素直になることがもう大変なんですよね。自分を見つめるということがどれだけ大変なことか。

アピチャッポン:私が10のアイデアを持っているとしましょう。それをやってみて、少し時間をかけて「これはいいかも、これはダメだな」という風に実践してみるんです。正しいとか間違っているとかいうことはなくて、ただ正直であればいいんです。 それが正しいと感じられれば、それが幸せだと感じられれば、それで十分です。

坂本:このトピックについて、もう一つだけ質問があります。海外の人たちは、タイの人たちとは全く違った視点でアピチャッポンさんの作品を解釈すると思いますが、 この点についてはどのようにお考えですか?

アピチャッポン:タイ人でも人によって見方が違いますし、それぞれの人がどのように私の作品を受け止めるかは私には想像がつきません。なので私は気にしていません。


●映像業界について:映画とアート●

坂本:最後の質問は、映像制作の業界についてです。大作を作る際の資金集めなど映画作家を取り巻く現状に興味があります。ファインアートのバックグラウンドを持つ作家の友人たちは、映画業界で活動している訳ではないのですが、短編映画を制作していて、より大きな作品の予算を確保しようとしています。資金を集めるのは難しいですね。記入しなければならない申請書がたくさんあって、撮影クルーと一緒に仕事をした経験や、見積書などを作成する経験がないと難しい作業だと思います。

また、映画業界とアート映像業界のギャップを感じています。アピチャッポンさんの作品のような長編映画は、美術館やファインアートの文脈で語られることもあります。なのでその文脈では、それらは商業映画ではなく、芸術作品として見られています。しかし、アーティストの映像作品が長編映画や商業映画に分類されることは稀です。実験的なものを期待されることが多く、そのために、「曖昧で実験的なものに資金を提供するのは難しい」というのが支援者側の本音かもしれません。制作者側にはより良い機材を使って制作したいという気持ちもあると思います。

でも、アートの世界で映像を売るのも難しいですよね。映像は絵画や彫刻のような有形作品ではないので、最近自分の映像作品や短編映画をギャラリーで売るのに苦労しています。伝統的なマテリアルで作られた作品を売るのに比べて、短編映画を作っても持続性がないと感じます。映像作品は商業映画業界だけでなく、ファインアートの文脈における実験映像という枠組みでも上手く機能していないのではと感じています。アピチャッポンさんも若い頃にも同じように感じていたのではないでしょうか? このことについて何かアイデアやアドバイス、お考えはありますか?

アピチャッポン:繰り返しになりますが、人生は人それぞれです。私はキャリアのかなり早い時期、30代の頃に私を理解してくれる人や支援者に出会えたので、運が良かったと思います。しかし、私がここで言いたいのは長編映画は芸術とは違うということです。純粋な意味でのアートではありません。私は自分の作品を長編映画などに分類しないようにしています。でも残念ながら、世の中には長編映画かアート映画かというような定義やカテゴリーがあり、それによって作品の金銭的なやりとり、流通や展示の仕方が違うんですよね。

私からのアドバイスがあるとすれば、創作するには、本当に必要なものを書き出して、イメージ、ドラフト、スケッチ、写真などを作成する必要があるということです。 最終的に作品がアートや映画になるといったことは決めずに、自分のアイデアを構築してみてください。このアイデアを他の人に伝えるときもカテゴライズしないで説明してみてください。それぞれのステップで、アイデアをより具体的なものに発展させるのです。「何がしたいのか? どのくらいの期間になるのか?」などを考え、資金が必要な場合は、アイデアが自然な形で実現できるような資金を探す必要があります。

重要なことは、もし長編映画をつくるとしたら一人では無理だということです。プロデューサーになってくれる良いパートナーを見つける必要があります。そして、プロデューサーには資金集めのために制作者の文章や企画書を理解してもらわなければなりません。ギャラリーも同様です。もしあなたがアート業界で仕事をするのであれば、あなたのことを理解してくれるギャラリストを見つける必要があります。自分のイメージに合った展示をしてくれるパートナーを探すという作業です。自分のことを本当に理解してくれて、一緒に楽しく仕事ができる人が見つかれば、物怖じせずに言いたいことが言えるでしょう。それはパートナーシップや家族のような関係性とも言えます。彼らは資金を探し、自分は創造する。このプロセスでは、それぞれの役割が違います。一歩一歩を大切にしてください。

坂本:機会が先に与えられ、そこに自分自身や自分のアイデアを当てはめようとすることもあります。しかし、最初のアイデアがどのように発展していくのか、もっと時間をかけて考えてみると、その機会と自分のアイデアは実際にはマッチしていないかもしれません。最初のアイデアが違う形で発展していくかもしれません。特に私の世代のアーティストは、ありとあらゆるチャンスを探し、応募書類を書く人も多いので、大変だと思います。疲れますし、健康的ではありませんね。

アピチャッポン:お察しします。あなたが言った現状は誰もが通る道になっていると感じます。私も若い頃、応募してアメリカや札幌のレジデンシーに行きました。いい経験になったし、自分を成長させることができます。そしてレジデンシーが何よりも良いのは、後に自分のネットワークを形成する新しい友人に出会えることです。これは重要なことですが、もっと重要なのは自分がそれを楽しんでやっているかということですね。

坂本:ありがとうございました。さまざまな質問を全てカバーできたと思います。今日はこのような機会を設けていただいて本当にありがとうございました。

アピチャッポン:こちらこそありがとうございました。お話できて良かったです。

坂本:お話させていただいて、本当に刺激になりました。自分が忘れていた多くのことに気づくことができ、中にはとても根源的なものがありました。自分のコアとなるエネルギーや創造性を見つめ直す大切な機会になりました。資金調達や日々の忙しさなど、私たちは表面的なレベルで様々な現実と向き合っていかなければなりませんが、正直になるということは本当に大切な事だと思います。

アピチャッポン:そして楽しむこと。やって楽しむことが大事ですね。

坂本:ありがとうございました。

アピチャッポン:こちらこそありがとうございました。

(翻訳:山崎いおん)

アピチャッポン・ウィーラセタクン
1970年タイ・バンコクに生まれ、タイ東北部イサーン地方コーンケンで育つ。チェンマイ在住。タイを代表する映画監督でありアーティストでもある。長編映画『ブンミおじさんの森』で2010年カンヌ国際映画祭最高賞(パルムドール)受賞。http://www.kickthemachine.com/

坂本夏海
1986年東京都生まれ。アキバタマビ21第54回展「日常のフィクション」企画・出品。家族や友人に起きた出来事、記憶、私的な物語を出発点とし、歴史や民話のリサーチを経て編まれた映像作品を制作する。2017年よりアーティスト・コレクティブ「Back and Forth Collective」としての活動も始める。2019年文化庁新進芸術家海外研修制度でGray?s School of Art招聘研究生となり、現在スコットランド、グラスゴー在住。http://www.natsumi-sakamoto.com/


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Akibatamabi 21 Special Interviews with EWS Professors: About the world
Apichatpong Weerasethakul × Natsumi Sakamoto
Being Honest with Yourself

The video is screened at Akibatamabi 21 from January 15th to February 14th.
http://www.akibatamabi21.com/exhibition/201203.htm

Sakamoto: Thank you so much for this opportunity. I'm honored to be here today.

Apichatpong: Me too.

Sakamoto: I feel a bit nervous, but this is such an amazing opportunity to talk about your work advice for young artists as well.

I'll just do a brief self-introduction. I currently live in Scotland but I'm from Japan. I studied at Tama Art University. In 2009, I graduated from the oil painting department. I didn't really learn how to make film. And I did some performance during the course and had to record the performance. This is how I encountered filmmaking. I still feel like a beginner in filmmaking. Now, I use a DSLR, a Sony camera, and I just film everything by myself, edit by myself, and make low budget films.

Apichatpong: Are you staying in Glasgow as a professional, or are you studying?

Sakamoto: I'm working as an artist funded through a Japanese foundation, supported by POLA, an art foundation in Japan. It's one of my first opportunities to be fully funded as an artist. I also moved here last year for family reasons, as my partner is from Glasgow. I did study in London, and this is how I studied film a little.

Apichatpong: It's good to know your background.

Sakamoto: I prepared a lot of questions.

Apichatpong: Let's go over them.


●About the Studio and Creative Environment●

Sakamoto: They were too long, so I'll try to make the interview simpler. I have been very influenced by your work since my B.A. I saw your work, mostly in Tokyo, and some of your films. I also recently watched them again because of this opportunity and I have a lot of questions. But today is mostly for current students and young artists like myself who want to study filmmaking. There are a lot of students in my generation interested in filmmaking, so I prepared these questions with them in mind.

I want to start with questions about your career path. I believe you work in your studio in Khon Kaen. Where is your studio in Thailand?

Apichatpong: I don't really have a studio in a classical sense. I always work from home. Now, I'm in Bangkok to finish my film. I used to work from in Bangkok for more than fifteen years. Then I moved north to Chiang Mai. It's not like a studio. I have a desk for thinking and meetings. It's a house with a lot of trees.

Sakamoto: That sounds great. The studio is called Kick the Machine Films, but there is no office or classical studio. Is that right?

Apichatpong:Right. There is a kitchen and an open space for dining. There's also a screening room with books, and storage space for artworks. But, I can work anywhere.

Sakamoto: It's different from how I imagined. I pictured you working in a big studio.

Apichatpong: No. I am not a typical artist with a studio. I don't have an assistant either, except for particular projects.

Sakamoto: I'm interested in how you work with local people and actors. I feel like I'm watching your family members as I see familiar faces in your films. So, your work is project-based you work with the same actors and with friends.

Apichatpong:I am really enjoying a mobile life, going to different cities and locations. If the project is complex, I travel with my team members and rent a space to work, but we often stay in hotels. But most of the time I travel alone during the conception period. I drive, take photos and write, and I enjoy this time without taking responsibility for a lot of people. I need to be absorbed to have a dialogue with myself, and to synchronize with the landscape and the people.

I am also a shy person. I want to work alone, shoot with my own hands. I edit my artworks myself, but when making films, you need other people. Over the years I have tried to find crew members and actors whom I feel comfortable with, whose lives interest me. Like you said, they are like my family, so I don't feel shy or uncomfortable with them. With artists, you can only work with people with whom you feel comfortable, but the first people that you must be comfortable with is yourself. You need to be comfortable being alone.

Sakamoto: Many of your film locations are in Thailand. And I always feel a sense of traveling and encountering new people in your film. I wonder how it would work for if I wanted to do the same thing in the same country. I am from Japan and now I live in a different country, and there is always a moment of finding new things. I would like to make films about superstitions in Scotland and try to find some connections to Japan, because I'm a foreigner traveling to different countries. I am interested in your relationship with Thailand, your home country, because you are still working there, but discovering new stories and new people.

Apichatpong: Connecting with different people allows me to understand different backgrounds, and to look at my home from different angles. In Thailand we have many layers of classes of people. There is prejudice and inequality. In order to connect with people and places, you must break through these layers to get a clear sense of different people's backgrounds. If you are attracted to your actors, or your crew members, you are interested in their lives you want to travel and see more with them. I don't think too much about work when I'm traveling. It's a pleasure to learn more and the idea or the concept of the work comes later.

Sakamoto:That's really interesting. In some of your works, such as Mysterious Object at Noon, that I just re-watched, there scenes where you encounter new people and ask them to tell stories. Some of them are very young and with very different backgrounds from you. That pleasure in meeting new people came up.


●About the Early Career●

Sakamoto: Moving on to the development of your career as an independent filmmaker, you mentioned how you make the structure of your films independently, and you work with different people, depending on the project. I wonder what your journey was like, from making low budget, self-sufficient work, to big productions with a lot of crew members.

Apichatpong: My films are low budget compared with commercial movies, but that is not something that I am so comfortable with. I'm really shy, so I didn't want to have a lot of people around me. Twenty-five years ago, when I came back from Chicago to work in Thailand, there was no independent film or art movies. There was no 16 mm film facility. I had to start with a 35 mm format, and learned how to be in the industry. It's not what I wanted to do, but I tried to work within the system. Gradually, I built my own team and developed my style. I'm still trying to find a way to make it work in Thailand, through co-production.

Sakamoto: It's like you created a new history of the film industry in Thailand after you came back from America. Do you think that influenced the young generation of artists in Thailand? Are there any active filmmakers collective or any artists collective around where you work?

Apichatpong: Not collectives, but individuals. We started to have good producers who support individual projects. I have had a small part in creating this independent movement but a big part is the availability of the equipment---the digital format has become affordable and is more democratic. Also, because of the social and political situation, people need to speak out. What's shown in cinema in Thailand is limited to a few genres. Young people are inspired by living in this time of change as a result of the digital economy and social media platforms.

Sakamoto: That's quite interesting. My friend who studied in London and has a Thai friend who made a film. She said that there are a lot of active filmmakers, and that young people are influenced by your work. What you said about equipment is also interesting. I would like to talk more about funding and equipment. Are there any rental places for filmmakers to use a decent camera, and did you also work with companies to organize filming equipment?

Apichatpong: I rent equipment as well as using my own, depending on the projects. We have many talents for lighting, camera crews, etc. Thailand has quality post-production houses for filmmakers from Hong Kong, Vietnam, and other neighbors. For independent filmmakers here, we sometimes use our own equipment. Personally I use all kinds of cameras. When the budget is low, I use a small camera. I don't care if it's 4K or 8K. I still use a low resolution camera. It's an interesting format. I just do it, and don't wait for the money.

Sakamoto:So you use what you have and create what you can.

Apichatpong: Yes. I just go out and shoot.

Sakamoto: That's nice to hear.


●Pursuing a Career●

Sakamoto: In your life, you have always been making work, but probably there were moments when it was difficult to continue in this career. I'm thirty four this year, and there are some people who are very talented are not continuing working on art anymore. It's really hard to continue on this career path. I have also found it difficult for. Do you have any advice, or anything to share from your personal experience of this kind of struggle?

Apichatpong: Everybody has different circumstances in life, but you can always create art because you had that interest in it at the beginning. How you feel about art will show because if you are really comfortable, you can destroy your fear of making and anticipate success.

But, what is success? Is it money? Is it recognition? If you think like that, you must look back on your relationship with your talent, your original desire to create. It's not about recognition nor money. You have to make it a habit, like writing or breathing. If you don't have enough money to go out and shoot, you can always write---one hour per day, about your dreams or a vision you have. There's no excuse not to make art. You have to, no matter what the circumstances. If you don't make art, it means your heart is not with it.

Stop listening to your own criticism. Sometimes you critique yourself too much. Or the people around you, your parents, your husband or your wife or whatever, it's not important. It's you, yourself. If you're happy doing it, you do it. If you're not happy, you don't do it. It's as simple as that. Set up the time and write everyday. I think writing is really important. You can have a dialogue within yourself. Writing a letter to yourself, for example. How do you see yourself as an artist? But don't think too much. Make one artwork a week. Set up your challenge, and enjoy doing it.

Sakamoto: That's really amazing. I think people are often too critical of themselves. Especially people who are hard-working.

Apichatpong: Especially now, everything can be art. Let's say you can do one piece a week. You can go to a public place and breathe or sit down for one hour and say, "This is my performance art." It needs no budget, only time, and then you can write down your experience, reflecting on what you've done. Then you can think about what your artwork will be the next week and write about it and maybe take photographs of what you do.

Sakamoto: Doing whatever you can is quite important.

Apichatpong: Creating a habit.

Sakamoto: I just read an interview in which you said that you keep a diary, your dream diary.

Apichatpong: Yes, but not every day. Sometimes I don't remember my dream, so I write down other things.

Sakamoto: Is that your source of inspiration, from your unconsciousness and your dreams?

Apichatpong: True, but it's also to remember because sometimes if I don't write it down, I forget. Writing it down or talking to someone is quite important. Even talking to your dog or your cat.


●About the Practice: Relationship between Reality and Fiction in Storymaking●

Sakamoto: I prepared some questions about your work. I'm really interested in your story making, using the stories that you encounter as well the stories you write. I'm especially interested in the difference between reality and fiction. I watched Mysterious Object at Noon yesterday. Both fictional and real stories merge together. It's really hard to tell what's real and what's not, so I'm interested in how you said that documentary doesn't mean anything, so you found it to be ultimately a fiction. How do you work with this story making?

Apichatpong: I think it's about a point of view. What is real and what is fiction is up to you or your point of view. Cinema doesn't tell the truth. Life doesn't tell the truth either because everything is about your own subjective point of view and opinion. If I'm holding this cup, we have different ideas about this cup. Your ideas, reality, and memories about this differ from mine. When you make art, or a film, you frame it. When you edit it or add light, you try to simulate reality but it never becomes that because you create your own rhythm, especially in cinema. When you edit or move the camera closer to a subject, there are things you don't show. It is impossible to create reality. Some say that dreams are not real, but when I dream, I see things in my dream. My dream is real. It happened. If you look at cinema, it does not represent the truth, but I can say that's my reality.

Sakamoto: I agree.

Apichatpong: Sometimes it doesn't make sense to talk about reality or fiction. They don't exist.

Sakamoto: Every time when I watched your films, I found that fiction became more like reality. I watch movies and all kinds of fictional stories, and I feel a distance from those fictional stories. But when I watched your films, even though they were fictional stories, I found some reality because it's similar to the reality or the dream that you may have experienced before, something that's connected to your reality. It's fiction that's not really in a secure place.

I often find myself watching your films and I feel a sense of being in that place as well. I have never been to Thailand, but I always feel like I'm there in that space. The experience and the dreams are very realistic, very different from the experiences of watching other fictional stories in cinema. I find more security in those stories, which don't affect my own reality. I see a very ambiguous boundary between the real and fiction relationship.

Apichatpong: I'm trying to present my idea of existence. When I am honest with myself, and try to present reality, sometimes my world is inhibited by a ghost or a monster because they were real in my childhood, or in dreams. With all of this interweaving of different realities, you create something personal. Even when we are talking like this within reality, but later when people see our video, when Mr.Suzuki edits this, it becomes his reality. It's not real anymore, but rather his point of view.

Sakamoto: It's interesting how you use real stories as well, such as the actors' life stories. And the actress called Jen, who you often work with. I think in some of the films, you use stories inspired by her life stories that affect the film's story as well. For example, you use her real husband in the film?

Apichatpong: I do use her real life backgrounds. But for that particular film, we had an actor play her husband.

Sakamoto: I see. The story is the same but the actor is different. The mixture of your stories and stories that other people bring to your film are organically merged.


●About the Practice: Using Various Media Formats●

Sakamoto: I saw the exhibitions you made and that was my first encounter with your work, not your films. There are many different styles, from feature films to film installations. You often call these works a project, which might include a lot of films, books and installations. How do you work in that way? Does the initial idea expand to different media, or how do you go back and forth into different formats?

Apichatpong: For some projects I may decide, "This is a feature film, this is a short film, this is a photograph." But sometimes there are so many interesting aspects of that location or idea that all become a project. It's automatic. If I want to draw or if I want to take photos, I'll do it because I don't know what's going to happen.

Sakamoto: It depends on the idea. If you find a lot of interesting stories and you cannot fit everything in a film you make a different work or a project.

Apichatpong: If I want to shoot something, I shoot it. Then I take a photograph, and if I decide that the photographs are more interesting, I use photographs.


●Current Situation in Thailand and Its Impact●

Sakamoto: We have a little time left, so I want to ask you about the current situation in Thailand. Previously I watched your films and often in your interviews you spoke about how you are an artist but not a political artist. You often mention that the subtlety of the political issues are in your work but not the main focus. In everyday conversation, political issues appear that are impossible to avoid in those realities, and it seems like the approach of your work has been like this.

But I've been reading recent news about the situation in Thailand, especially this year. There is a big difference from previous years. People are uprising. I also recently saw that artists responded at the Bangkok Biennial, making a statement about this situation as well. How does this particular moment affect your approach to your art?

Apichatpong: That's a very relevant question. I am also questioning that myself because I'm just flowing with life. When I was younger, I was more into different kinds of politics, personal politics and sexual politics. But as I grew older, I started following the country's situation, and the global situation. I have started to think about social security and all these kinds of things.

The current uprising was started by the young generation, as young as high school students. That's really inspiring. They started to talk about subjects that older generations were afraid to touch because of the law. We cannot talk about the monarchy, the royal families, for example. But the young generation talk about them. There are millions of people all over the country rising up, so I'm trying to make sense of this generation. I'm inspired and I joined the demonstrations. I shot a video and I don't know what to do with the footage yet. I'm trying to make sense of the current situation by documenting the demonstrations. I cannot help but compare different identities and the transformation of the spirits. Maybe this can be a new work, but I don't know yet.

Sakamoto: Because it is happening right now I imagine it's quite hard to be objective, but you are thinking it through by making a film. You have been part of it too. That is probably a very different approach compared to the previous work because you were always distanced, in a way. Probably you will think about it and later on some work will appear, I suppose.

Apichatpong: I try not to decide concretely. I will just let it come. Often, when I start to write or shoot something, after a while I dream about the work. It appears while I sleep, coming through the dream.

Sakamoto: That's very interesting. On the unconscious level, you know the answer to what you should do.

Apichatpong: Sometimes, yes.


●Presenting in Regions with Different Cultural Backgrounds●

Sakamoto: One of the last questions. I'm interested in the perspective of a European, or a Japanese person, who watches your films. When I get the information about your work, it has to be either translated into Japanese or English. I'm really interested in how people interpret your work from very different backgrounds, like myself or people in Europe.

Talking about Thai local politics, they have very different perspectives. I read a lot of your film reviews and ideas about your work from European and Japanese perspectives. They don't take those local contexts into account so much. In the previous film, they talk more about aesthetics, techniques or the philosophy of your film, which is detached from everyday local issues and politics. I wonder about the difference between the International audience and the local audience. How do they appreciate your work?

I was also wondering whether there is any universality in audiences. Their perspectives are all different because of their backgrounds. I'm a Japanese person working in Europe, and people read my work as something a Japanese female artist makes. When I show my work in Japan, there is a different interpretation of my work. Sometimes I'm confused about who is going to be the audience. I often have this conversation with my other friends. One of my friends told me that she often changes the work depending on where she shows.

Apichatpong: No. That could be interesting, but not to me. I don't really care about who my audience is because I am the first audience. I only care if I'm honest about what I want to share. That's already hard enough. To talk to yourself is the most difficult, I think, to understand what you want. Working with a curator is important. When I showed my work in Japan, for example, I worked best with curators who knew their spaces. They provided context and advice. For me it's not my job to curate, nor thinking about the audience. If I have to curate, I curate for myself. If I can advise, it's better not to spend time worrying about what others may think. Think more about your own reflection of your piece. It's interesting because I read this article of Marie Kondo, a famous Japanese woman who is a guru of decluttering your space.

Sakamoto: Sometimes I watch her on Netflix and other programs.

Apichatpong: I read about when she made her programs for foreigners, she presented something very minimal, very clean. But when she makes something for the Japanese market, she does it in a different style. It's full of colors, full of different fonts for text. If we talk about her, we talk about commerce, not about art.

Sakamoto: True.

Apichatpong: You don't want to be Marie Kondo. What she does is practical. Beautiful, yes. But in a visual art context, you need to be you. I don't think it's healthy to create different things for different people as an artist. That means you really become like an advertising company.

Sakamoto: That's definitely something I struggle with, to trust my feelings. The more you work, the more you see other people's work. It is difficult to believe in myself in the way I could when I was in my twenties. It's so right, about how being honest is already tough enough. Seeing a reflection of yourself is already tough enough.

Apichatpong: I may have ten ideas. I just do it and take a little time to come back to see, "Okay this one, maybe I like it, this one, no." There's no right or wrong, just what is honest. If this one feels right, you feel happy about it and that's enough.

Sakamoto: Just one more question about this topic. The international audiences will read your work in a very different way compared to people in Thailand. Do you feel alright about this?

Apichatpong: For Thai people, a different person has a different perspective. It's impossible. So you shouldn't care.


●Thoughts on the Film Industry: Cinema and Art●

Sakamoto: The last question is about the filmmaking industry. I'm interested in the current situation for filmmakers. For example, if you are trying to make a bigger production and apply for funding. Here I have artist friends who are not exactly in the film industry, but with fine art backgrounds. They make short films, trying to get some budget to make a bigger production. It's difficult to find funding. There are a lot of applications that you have to fill out, and without experience working with a film crew, writing estimates, etc. is difficult.

I feel the gap between the film industry and the moving image industry. Sometimes feature films like your films are represented in the museum context or in the fine art context. So, people see a feature film as art, not like a commercial film. It can be seen as a piece of art. But when you work in moving image, artists' moving image, it's not really categorized as a feature film or a commercial film. It's often expected to be experimental and because of that, it's probably more difficult to get funding for something ambiguous and experimental. People start to feel like they want to work with better equipment.

It's also hard to sell a film in the arts. I am recently struggling with selling my moving image or short film in a gallery. It's not a tangible artwork like a painting or sculpture. It's not really sustainable making short films compared to traditional artists who sell works. I feel sometimes it doesn't work in this format, the moving image format, not only in the commercial film industry but also in experimental artist film within the fine art context. I'm just wondering whether you felt the same previously when you were younger. Do you have any ideas, advice or thoughts?

Apichatpong: Again, each person has a different path. I think I was lucky because I found people and supporters quite early on in my career, when I was thirty something. But I think the bottom line is that a feature film is different from art. It's not pure art. I try not to categorize my work as a feature film or something else. But unfortunately, the world still operates on these definitions and categories, a feature film or art film, and the channel of money, distribution, or exhibition is different.

If I can advise you, to create, you need to write down what you really need and create an image, draft, sketch, or photograph. Try to build this image of what it is, but do not categorize the work as a feature film or a work of art yet. Then try to communicate this idea to people, regardless of whether it's going to be in the art or cinema. Try to translate it into something more concrete in each step: "Ok, what do you want to do? How long is it going to be?" If you need funding to explore, you need to research funding to make it develop organically.

Then the important thing is that when you are stepping into the territory of a feature film, for example, it's impossible to do it alone. You need to find a good partner to be your producer. And, your producer needs to understand your writing and your proposal so that he or she can try to find money. The same with your gallery. If you go to the art industry, you need to find a gallerist who understands this. It's a matter of presentation, and you are shopping around for your partners. Once you have someone who really understands you and enjoys working with you, you are honest with them. It becomes like partnership or another family. Their job is to look for funding and your job is to create. Everyone has a different job in this process. Take it step by step.

Sakamoto: Sometimes an opportunity comes up first and you are trying to fit into the opportunity, to put your idea into the opportunity. But probably if you take more time to think about how the initial idea is going to develop, the opportunity might not actually be the right one. The initial idea might develop in different ways. It's difficult with artists, especially of my generation, who are busy with writing applications, looking at every opportunity you can find. It's exhausting and not healthy.

Apichatpong: I understand. I feel that it has become a path that everyone is taking. But when I was younger also, I made applications and went to residencies in the US and to a residency in Japan, in Sapporo. It was a good experience. It allows you to develop. And the best thing is that you get to make new friends that later form your own network. In a way, it is important, but you have to make sure you enjoy doing it.

Sakamoto: Thank you so much. I had multiple questions but I think I covered everything. Thank you so much for the great opportunity.

Apichatpong: Thank you I enjoyed it too.

Sakamoto: It has been really inspiring talking with you. I can recognize a lot of things that I've been forgetting, some of them very fundamental. It has been an important opportunity for me to look again at my core energy and creativity. I think on a superficial level there are so many realities like funding, everything that is so busy, but it is really important to be honest.

Apichatpong: And to enjoy it. It's important to do it and enjoy it.

Sakamoto: Thank you very much.

Apichatpong: Thank you.

Apichatpong Weerasethakul
Born in Bangkok in 1970, grew up in Khon Kaen in Northeastern Thailand and lives in Chiang Mai. Apichatpon Weerasethakul is a leading Thai film director and artist. He was the recipient of the 2010 Cannes Film Festival's highest award (Palm d'Or) for the feature film "Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives".
?http://www.kickthemachine.com/

Natsumi Sakamoto
Born in Tokyo in 1986. Akibatamabi 21 54th Exhibition "Everyday Fiction" (Planning and Exhibition) . Sakamoto creates video installation, animation and painting works that include historical and folktale research, starting from the private stories of her family and friends. She also started activities as an artist collective "Back and Forth Collective" from 2017. In 2019, she became an invited research student at Gray's School of Art under the Agency for Cultural Affairs Program of Overseas Study for Upcoming Artists, and currently lives in Glasgow, Scotland.
?hhttp://www.natsumi-sakamoto.com/

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開場時間 12:00〜19:00(金・土は20:00まで)
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